……前回、君と話した時、相米慎二の『東京上空いらっしゃいませ』で牧瀬里穂がジャズふうのアレンジで唄う最後のシーンを話題にしたけど、牧瀬の歌唱の吹き替えを担当したという小笠原みゆきの音源があるのが、わかったよ。君との話をアイドルおたくの年少の友人に話したら、CDアルバム『アイドル・ザ・ムービー サウンドトラックコレクション』というのを教えてくれたんだ。現物を見てないから、タイトルを聞いただけで、よくそんな企画で出せたとものだと思ったよ。まあ、君はVHSテープを持っているのだから、繰り返し再生して聞けばいいわけだけどね。
――実は、あの後、僥倖ともいえる出会いがあってね、Netに詳しくない君には説明しても理解できないと思うので省略するけれど、思い立って、amazonを検索してみたら、君のいうCDアルバム『アイドル・ザ・ムービー』というのを、僕も発見したんだ。それで、早速、購入したよ。ほんとうは、本来のジャズナンバーのものが欲しかったけど、仕方がないね。
……amazonぐらい、俺だって知ってるぜ。
――僕は、ともかく、amazonの情報に小笠原みゆきさんの名前があったので、どんな内容かは度外視して入手したということになる。現物を見て、驚いたよ。95年に出されたものだけど、確かに君がいうように、よくこういう企画で出せたなと思う。しかも、ジャケットと帯というのかな、それらを見て、よほど、マニアックなアイドル映画ファンでないと購入しないのではと思わせるデザイン(内容告知も含め)なんだな。いや、アイドルが歌を唄っているのなら、ファンは買うかもしれないけれど、基本的にサウンドトラックだから、インストルメンタルなんだよね。唯一、歌があるのが、『東京上空』ということになる。
……どんな、アイドル映画が取り上げられているのかな。
――松竹百年ということで企画されたものなので、85年から95年までの松竹作品ということになる。以下、列記してみると、『キッズ』(監督・高橋正治、音楽・ミッキー吉野、主演・早見優、85年)、『アイドルを探せ』(監督・長尾啓司、音楽・新川博、主演・菊池桃子、87年)、『Let’s豪徳寺』(監督・前田陽一、音楽・ミッキー吉野、主演・三田寛子、87年)、『この愛の物語』(監督・舛田利雄、音楽・久石譲、主演・藤谷美和子、87年)、『東京上空いらっしゃいませ』(監督・相米慎二、音楽P・安室克也、主演・牧瀬里穂、89年)、『真夏の地球』(監督・村上修、音楽P・日永田広、主演深津絵里、91年)、『満月 MR.MOONLIGHT』(監督・大森一樹、音楽・笹路正徳、主演・原田知世、91年)、『シュート!』(監督・大森一樹、音楽・土方隆行、主演・SMAP、94年)、『時の輝き』(監督・朝原雄三、音楽・西村由紀江、主演・高橋由美子、95年)となる。相米と並んで舛田利雄、前田陽一、大森一樹らの名前があり、なんとも、当時の日本映画の情況が垣間見えてくるかのようだね。85年という年は、僕にとって、もっとも共感してきた加藤泰さん(81年の『炎のごとく』が最後の作品)が亡くなった時だし、加藤さんと並んで同じように追認し続けてきた鈴木清順さんが『ツィゴイネルワイゼン』と『陽炎座』で、見事に復活したにもかかわらず、やや不満な『カポネ大いに泣く』(その後、新作は、91年の『夢二』まで待たなければならなかった)が上映された年でもあったな。85年の日本映画を僕なりに概観すれば、森田芳光の『それから』という傑作を筆頭に、相米の『ラブホテル』(『台風クラブ』や『雪の断章―情熱―』も同年の上演作品だが、『ラブホテル』の方がはるかにいい)、澤井信一郎の『早春物語』、神代辰巳の『恋文』、柳町光男の『火まつり』、井筒和幸の『二代目はクリスチャン』だね。
……おいおい、俺は、全く評価していないが、世界のクロサワの映画もその年ではなかったか。
――そのようだね。『乱』だっけ。後年、テレビかレンタルで見たのか、忘れたけれど、あまりの退屈さで、途中で止めたのを覚えているよ。黒澤作品に関していえば、共感した作品はまったくないね。僕にとっての日本映画は、70年前後の東映任侠映画と若松プロのピンク映画に凝縮されていたから、それらの幻影を求めて映画の旅を続けていたようなものだった。
……そういえば、君にとってアイドル映画といえば、山口百恵と三浦友和が共演した、いわゆる百友映画だろう。
――そうだね。70年代中頃から末にかけてということになる。最初に見たのが、『伊豆の踊子』(監督・西河克己、74年)だった。ほとんど、見ているけれど、『潮騒』(監督・西河克己、75年)、『春琴抄』(監督・西河克己、76年)、『霧の旗』(監督・西河克己、77年)、『天使を誘惑』(監督・藤田敏八、79年)といった作品は、同時期に封切られた日本映画のなかでも傑出したものになっていると断定していいと思うよ。
……そうかい、君に百恵を語らせたら、終わりそうにないし、本筋から離れそうなんで、肝心のそのCDは聞いてみてどうだったんだい。
――『東京上空』以外の映画は、見てないから、作品に関してはなにもいうことはないけれど、サントラ磐として聴く限り、しっかりしたインストメンタル・アルバムだといってもいいよ。ミッキー吉野、久石譲、西村由紀江といった作曲家たちの音楽は、さすがに聴かせるね。例えば、映像を見て、音楽を聴くというのと、音楽を聴いて映像をもう一度、想起するという行為は、共感していればするほど、さらに新たなイメージを醸し出すものだと思う。つまり、作品が良ければ音楽がいいといえるし、音楽だけを聞いていて、音楽の深さがあるからこそ、映像も際立っていくのだとあらためて思うものだ。この『東京上空』は、文夫(中井貴一)が、トロンボーンを演奏するシーンが何度か出てくるが、最後のパーティーシーン以外、それほど、印象深いというわけではなかったけれど、このCDに収められているトロンボーンは音が、実にいい。この曲があるから最後のシーンに感動するんだなと、思い返すことができた。そして、映画を見ているときは、明らかに牧瀬の歌唱ではないということがわかるので、小笠原さんの歌唱とアレンジの素晴らしさを聴くことになるわけだけれど、このCDを聴いていると、不思議なことに、一瞬、牧瀬里穂が唄っているような気がしてくるんだな。特に、ジャズ風になる前の出だしのところとか。そして、当然のことながら、やはり、パーティー会場でユウが唄い踊るシーンが、くっきりと思い出されてくる。サントラ磐を聴いていても泣けてくるね。
……ようするに、なにもかも、この映画が好きなんだよ君は。26年という長い年月を経ても。

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