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2017.06.10 Saturday

「日活ロマンポルノ」時代を俯瞰する貴重な映画誌                    ――日本映画史のなかでも多くの傑作・名作を生みだしたことは断言していい

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    ワイズ出版編集部 編『日活 1971-1988 撮影所が育んだ才能たち
    (「図書新聞」17.6.17号)

     わたしにとって日活映画とは、少年期は小林旭(石原裕次郎には、それほど共感を抱くことはなかった)の渡り鳥シリーズであり、二十歳前後の頃は、折からの対抗と抵抗の渦動のなか、鈴木清順監督の旧作品がまとめて上映されたのを観て清順世界に魅了されていったことを、取りあえずは意味している。その時期、鈴木清順は日活を解雇されていたため作品を撮ることはできなかったが、澤田幸広の『反逆のメロディー』(70年)、と『関東幹部会』(71年)を観て、衝撃を受ける。そして、藤田敏八の『八月の濡れた砂』を71年8月、立ち見で観た記憶がある。それが、旧体制での最後の日活作品だったのを、後で知ったのか、その時すでに認知していたのかは、もう覚えてはいない。
     本書は、71年11月、新体制での日活作品、いわゆる日活ロマンポルノ(後に、「にっかつロマンポルノ」)としてスタートした、二作品(西村昭五郎監督・白川和子主演『団地妻 昼下がりの情事』と林功監督・小川節子主演『色暦 大奥秘話』)から、88年11月の「ロッポニカ」最後の二作品(藤田敏八『リボルバー』、金澤克次『首都高速トライアングル』)までの詳細なフィルモグラフィーを付し、作品に関わったプロデューサー、監督、脚本家、俳優など、総勢一〇八名のインタビュー、エッセイなどを収録した、「日活ロマンポルノ」時代を俯瞰する貴重な映画誌である。
     フィルモグラフィーを眺めながら、いくつかのことを思い起こしたといえる。わたしにとって、共感した作品の多くは、藤田敏八と澤田幸広を別として、ロマンポルノ作品によって初めて知った監督たちだった。神代辰巳(68年、『かぶりつき人生』がデヴュー作品)、加藤彰、曽根中生、田中登、山口清一郎、村川透、根岸吉太郎など、思いつくままに挙げていけば、神代以外は、ロマンポルノ作品がデヴュー作ということになる。当時しばしばいわれたことだが、ロマンポルノ作品になったことで、多くの優れた監督や脚本家がデヴューできたということは、確かだった。
     白川和子とともに、ロマンポルノ作品の最初の主演女優となった小川節子は、「デビューする事にな」った時、「本心は、嫌でたまりませんでした」と述懐しながらも、「『日活ロマンポルノ』というのは、大きな、ひとつの時代を作ったのかも、と思います」と本書のなかで述べているように、間違いなく、日本映画史のなかでも、多くの傑作・名作を生みだしたことは、断言していい。わたし自身が観たなかで、いま、それらの作品名を書き記すと、それだけで字数を費やすので、本書からの発言を例示することで、わたしの日活ロマンポルノ作品に対する思いに代えさせたい。
     「何より魅力的だったのは、ロマンポルノに登場する女優さん達であった。(略)初期の白川和子、片桐夕子を始め田中真理、山科ゆり、宮下順子、芹明香など独特の存在感を持った彼女たちを間近で見られるのが楽しかった。」(鵜飼邦彦)、「一九八五年夏、入社二年目の僕は宣伝部に移動していた。(略)最初の担当作品として相米慎二監督の『ラブホテル』(略)を与えられた。(略)ヒロイン名美が不倫の上司から一方的に切られた受話器に向けて、それでも話し続ける長い長い独白。バックには山口百恵の『夜へ』が切々と流れる。(略)自分が心打たれたこの映画を世の中に伝えたい。僕はこの作品を担当できる自分の幸せに感謝した。(略)本社地下の定員四十ほどの試写室には吉本隆明さんまでが現われ、連日『ラブホテル』の試写で埋まった。」(東康彦)、「当時、僕らプロデューサーや企画部がもっとも苦労したのは、脚本作りだった。それまで日活映画を書いてくれたライターはもういない。」(伊藤亮爾)、「企画会議をプロデューサーと企画部の社員と一緒に行った中(略)で、『十分に一回、エロティックなシーンがあれば何をやってもいい。ジャンルは問わない』ということを確かに言いました。(略)日活ロマン・ポルノはプロデューサーシステムというのではないけれどプロデューサーが中心になって作品を作っていきました。」(黒澤満)、「体制に順応して幸せな生活を送っている奴はいいロマン・ポルノを作れなかったんじゃないのかな。なんだかんだで、みんなはちゃめちゃだった。/僕はロマン・ポルノの本質は反体制だと思っているんだ。」(佐々木志郎)
     わたしは、「日活ロマンポルノ」が作られる数年前、東映任俠映画に熱狂し、共感していた。どんな犲匆馭姫撚茘瓩茲蠅癲対抗と抵抗の情念を漂わせていたからだ。ある種のアナーキーな心性といえばいいだろうか。一群の「日活ロマンポルノ」作品にも、そのことは、地続きのように繋がっていたから共感していたのだと、いま振り返っても、そういい切ることができる。そして、そのことは、いまだに、わたしの心奥に、深く刻まれているのだ。

    (ワイズ出版刊・17.4.25)

    2017.08.03 Thursday

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